東京都が設立した「石原銀行」が経営破綻して、400億の追加出資をするかどうかでもめている。この銀行はそもそも、民間の銀行など金融機関で「ひきはがし」「貸し渋り」が横行して、中小企業の資金繰りが難渋し、経営破綻するケースが広がるのを救済する目的で、ひとりよがりの「義人」石原慎太郎が第二期選挙公約に掲げ実現させたもの。だが、設立時にはもはや「貸し渋り」は止んでいて、そもそも設立の合理的根拠を欠く状況になっていたようだが、「無担保」「無保証」「高金利」の貸付条件を振りかざして、「要らない」という中小企業を戸別訪問してむりむり貸し付けた挙句の果てだ。
江戸時代、松平定信の「善政(節約令)」が天下に敷衍して庶民はその恩恵にあずかり、もう金なんか要らないという時世が出現したという戯作の話を野口武彦が書いている(日経「江戸の風格」)。この戯作(山東京伝「孔子縞于時藍染(こうしじまときにあいぞめ)」によれば、金貸しは金を返せといわず、ときそば屋は金を多く払った客を追いかける。上野広小路ではぼんやり歩いていると懐に金をねじ込まれる「巾着切られ」が出現し油断できない。そしてとうとう追いはぎならぬ「追い剥がれ」が出現するに至る。夜道を歩いていると刀で脅して縛り上げ、自分は丸裸になりながら、被害者の懐に衣服金銀をねじ込んで逃げるのである。天もこの「善政」に感じたのか空から金の雨を降らせる。こんな日は「今日はお日和が悪い。もう上がりそうなもんですな」というのが金なんか要らない庶民の挨拶になったそうだ。
トヨタから派遣してもらった社長が悪かったなんてせりふは「おとこ」慎太郎が泣くんじゃないか。