これはなんだ? 3  おしまい  welfareとは
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「捨てる生活」から「活かす生活」へと大書されたポスターが掲げられていた。

市役所の「総合福祉センター」だった。

この巨大な「収監所」のような「修道院」のような建物が、「福祉センター」だったとわかるとあっけにとられた。

ポスターは正確にはごみ減量の呼びかけのようだが、この異様な福祉センターに掲げてあると、どうしても老・弱者を「捨てる暮らし」から「活かす暮らし」へと読み替えたくなってしまう。


何かいわくあり気な、なさそうな・・・
誰がデザインした建物なのだろうか。
何をイメージしてデザインしたのだろうか。

中世の修道院のような、隔離病院(伝染病院)のような印象がどう現代の福祉とマッチしているのだろうか。

普段疑問に感じなかった「福祉」という言葉の意味を思わず調べてみたくなった。


その結果わかったことは「福祉」という言葉は、戦後の新憲法に登場するまで日本にはなかった言葉で、「welfare」の訳語であるが、その概念は本家のイギリスでもヒットラーとの戦争の中で、国民にイギリスの国家理念を与えるために平和と民主主義による「福祉国家の創造」という形で、「福祉」の現代的定義がはじめて与えられ、その概念は形成途上のものだということだった。

国民の福祉は現代国家の当然の責務と思い込んでいたが、その概念の中身は国民が形成していくものらしい。

急激な高齢化社会を迎えて、介護と看護が大問題となっているが、「捨てる」から「活かす」への大転換は可能だろうか。
可能かではなく、しなければならない課題なのだが。

「more」に語源などを記載した。




日本語に「福祉」という言葉が登場したのは戦後の現憲法が初めてだったようだ。

戦前の日本には「慈善」や「救貧」や「養育」という言葉はあっても、「福祉」という言葉も概念もなかった。(学界では「社会政策」や「厚生」経済学という言葉はあったが「福祉」はなかった。官庁として「厚生省」はあったが、所掌は傷痍軍人と戦死した遺族の管理であり、やがて兵隊となる国民の健康の維持増進であり、「国民の福祉」ではなかった)


マッカアサーから押し付けられた「welfare」の訳語が「福祉」だった。

漢字訳した「福祉」とは、「福」の字は神が壷に食物や財宝をいっぱいに持っているという形象であり、「祉」とは、神の歩いた足跡を意味し、「福祉」とは、神が幸福の源となる豊富な食物や財宝を戸口に置いて帰った、という物語から生まれたものらしい。
神をまつりごとの為政者のシンボルと転化すると、福祉は人民の幸福を目標とする為政者の倫理規範となる。
↑http://www.kazuokawasaki.jp/kk/9_designlang2.php?cid=28&del=3


マッカサーが押し付けた「welfare」の概念自体も当時はまだあやふやで、原語となるwelfareという中世英語は、「良い」あるいは「旅、到着」を意味するwellと、「食料の供給」を意味するfareからなり、welfareには「汝の隣人の福」という博愛思想の意味が込められている、のだそうだ。
↑http://www.kazuokawasaki.jp/kk/9_designlang2.php?cid=28&del=3

現代的概念としての「welfare」には理念はあってもまだ確定した中身はなかったようだ。
ただ、ここから憲法上いきなり保障されたのが、国民の「幸福追求権」であり、「文化的生存権」であり、勤労者の「労働三権」であった。

中世では、同じような内容を表す言葉にホスピスがあった。
小さな教会が巡礼者や行路病人に宿と食事を給し、看病やケアをしたことからする看護収容施設全般をホスピスといい、教会で看護にあたる聖職者の無私の献身と歓待をホスピタリティ (hospitality) と呼び、そこから今日の病院を指すホスピタル (hospital) の語がでたそうだ。歴史的には、ホスピタルもホスピス同様に、病院だけでなく、孤児院、老人ホーム、行き倒れの収容施設なども指した。ホテル(hotel)も語源はホスピスである。


welfareとhospisの関係はわからないが、以上のことから考えるとほぼ同時期に成立した言葉ではないだろうか。


「welfare」の現代的な定義が確立されたのは、第二次大戦中の1939年のことであり、ヒットラーとの戦争に勝ち抜こうとするイギリスが国民に目標を与えるために、平和的で民主的な福祉国家の創造という対立概念を確立する過程に由来しているらしい。


つまり「福祉」の概念はまだ新しく、その意味するところも形成途上にあるということらしい。


日本の「厚生省」は昭和13年内務省から独立して、主として傷痍軍人と戦死遺族を所掌する官庁として出発し、戦後は引揚者援護・医療・保健・社会保障などを所管する巨大官庁となったが、現在も厚生労働省として「厚生」という難解な言葉を引き継いでおり、「福祉省」に改称する見込みはない。

★厚生;健康を維持増進するとともに、生活を豊かにすること。この言葉(漢語)にはヨーロッパのキリスト教文化に由来する博愛の思想はない。
by aizak3 | 2011-06-12 15:02 | 多摩
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