都市の装置 12 中央卸売り市場 3
都議選が自民党の大敗に終わって、築地市場の移転問題が再び都政の争点となってきた。
「中央市場問題」に眼を向けるチャンスにはなるだろう。
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築地市場(昭和9年(1934年)完成)が老朽化し、市場のレイアウトも「鉄道時代」に合わせた設計になっているため、場内にトッラク・スペースが殆どなくて、現代に物流環境に適合しないために、もはや抜本的な再整備が必要となっているが、豊洲が適地なのか、築地がやっぱり適地なのか、施設の規模やその財源をどう捻出するのかが、争点らしい。


移転派は、豊洲なら新規の建設なので、簡単に出来るし、財源も築地を高く売り払えば、まかなえるので問題なしという立場。

反対派は、豊洲は土壌汚染も地下水汚染もあるので「食の安全」に不安がある。築地より大規模の市場を整備しても弱小業者は入れない。
そもそも築地の水産市場の地位は年々低下しているのに、そんな大規模市場は要らない。それより築地で再整備すべきだという立場。


これには大多数の場外市場関係者も賛成している。現在の築地市場の跡地を売り払うといっても、跡地の利用計画すら立てず、ただ高く売れればいいのか、という都市経営的視点からの批判も加わる。


築地の現状がジリ貧なのは、移転派も反対派も一致している。


築地水産市場は「昭和62年の流通量89万トンをピークとして流通量は減り続けている」(資料:東京都-平成13年12月)。


産地直送便に代表される農家や「水産加工業者」との直接取引を主な理由として、市場を通さない流通は増え続け、築地を経由する商品の量は減り続けているということらしい。

取扱い金額が減れば「口銭」で経営する卸・仲卸を直撃する。卸売市場関係業者の経営難というのも以前から市場問題のひとつになっている。


東京都副知事になったあの猪瀬直樹が『日経BPネット・猪瀬直樹の「眼からウロコ」』で書いている→nikkei BPnet →http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/inose/071016_12th/index.html
もちろん、猪瀬副知事はジリ貧傾向を認めたうえで、だからこそ、「起死回生策」として豊洲移転が必要なのだという立場だ。


「築地市場のピークはバブル全盛の1987年(昭和62年)。水産物の取扱量(トン)を、1980年を100とする指数で見ると1987年は109。1990年のバブル崩壊まで100以上をキープしていたが、その後の「失われた10年」の間はずっと下降線をたどり、2005年には80まで減少した。青果物も大差はない。


ちなみに、2002年度の築地市場の取扱金額は6300億円。それが2006年度には5800億円まで減少している。この4年間で500億円、約8%も減少している。
これからも減る傾向はつづくだろう。鉄道の時代の物流(設計による場内構造)ではもう間に合わない。

いまのままでは、ジリ貧となるしかないのだ。(中略)築地市場の取扱量が減少しジリ貧になると、そのほかの問題も浮上してくる。

コマの価値である。
築地市場の売り場は1600カ所にコマ割りされており、そのコマ割りに沿って中卸が店舗を構えている。
1コマの間口は1.8メートル(奥行き3.6メートル)。2コマ使っている店舗が多い。
中には5コマ、10コマを有する大店もある。このコマの権利は、相撲の親方株のように相場で売買される。
バブルのときには1コマ1億円にもなったそうだ。しかしいまは、1コマ500〜700万円くらいにまで相場が下がっている。2コマ持っていても1200〜1400万円程度だ。
築地市場自体がジリ貧になれば相場も下がる。これでは、権利を売ろうとしても、担保価値が薄く、あまり金にならない。築地市場自体が不景気なのだ。


築地市場は日本最大規模の市場で「首都圏の台所」と言われてきた。築地のセリの値段をもとにマグロの値段が決まる。価格決定力を持っているわけだ。
我々がスーパーで買うマグロの切り身や刺し身、あるいは料亭のマグロ料理や寿司屋のマグロの金額は築地が基準なっている。築地市場のこうした力の源泉は、日本一の取引量を維持してきたことにある。


ところが、いまやイオンやイトーヨーカドーなどの大手小売店が産地と直接取引をし、バイイングパワーが移りつつある。このため、築地市場の価格決定力が低下し始めているのだ。(中略)
もちろん消費者から見れば、イオンやイトーヨーカドーが価格を決めても問題はない。

お寿司屋さんも、イオンに行ってネタを買えばいい。あるいは、生産地と直接契約して買えばいい。
そうなれば、実際にそうなりつつあるのだが、築地市場の価値は下がり、ジリ貧に拍車がかかるだろう。築地市場の取扱量は減少し、シャッター通り化しつつある。


豊洲移転が遅れれば遅れるほど、ジリ貧化が進むのは間違いない。
豊洲に移転をすれば、地の利を生かし物流機能を高めることができるだろう。物流機能が高まれば、取扱高が再浮上する「可能性」もある。
ただし、大店と中小店舗との間でコンセンサスを形成するのは難しい」。


資本力のあるなしで対応が分かれるだろことを猪瀬副知事も認めている。どうなるのか?
いくも地獄、残るも地獄なんて「石原銀行」の今後の行方と同じだ。


データは「maore」に記載した。
★築地市場水産物取扱量推移 数量・金額  東京都中央市場 総括表 2001年~2008年
★築地市場水産物取扱高の推移 一日当りトン <資料:中央卸売市場水産物取扱高の推移;トン/日
★仲卸業者数の増減 ・ 市場別(表 1-2)資料 : 各年12月末現在 「業務実態調査報告書」東京都中央卸売市場

昭和60年代から現れていた市場の現状と将来を東京都はどのように認識してきたのか?は次回に






中央卸売市場水産物取扱高の推移;トン/日、市場資料より作成>
       単位トン  対前年比
 2002年  2342      
 2003年  2245     95.9
 2004年  2165     96.4
 2005年  2139     98.8
 2006年  2038     95.3
 2007年  2077     101.9

築地市場水産物取扱量  東京都中央市場 総括表

前年を100とする指数
2002年(平成14年1月 ~ 12月) (開市日数 272日) 数量 100.8 金額 98.4
2003年(平成15年1月 ~ 12月) (開市日数 274日) 数量 96.5 金額 92.9
2004年(平成16年1月 ~ 12月) (開市日数 279日) 数量 98.3 金額 99.0
2005年(平成17年1月 ~ 12月) (開市日数 274日) 数量 97.0 金額 97.4
2006年(平成18年1月 ~ 12月) (開市日数 274日) 数量 97.7 金額 102.0
2007年(平成19年1月 ~ 12月) (開市日数 273日) 数量 99.2 金額 99.5
2008年(平成20年1月 ~ 12月) (開市日数 274日) 数量 99.9 金額 98.0

わずかずつだが一貫して低下傾向にある。→築地市場内では今後とも減少することをうかがわせる。

築地市場内仲卸業者数の推移
仲卸業者数の増減 ・ 市場別(表 1-2)資料 : 各年12月末現在 「業務実態調査報告書」東京都中央卸売市場
築地市場内水産物部 仲卸業者数の推移 資料;東京都中央卸売市場 HP
           法人  個人   合計   対前年比     元年比
 1989年(平成元年) 753   327   1,080 
 2003年(平成15年) 734   148    882    △198(81.7%)
 2004年(平成16年) 705   133    838   △44
 2005年(平成17年) 695   123    818 △20
 2006年(平成18年) 687   111    798   △20
 2007年(平成19年) 681   105    786   △12     △294(72.8%) 

 元年比では個人△225(32%)、法人△72(90%)となっていて、資金力のない個人の撤退が著しい。
by aizak3 | 2009-07-15 16:34
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